確定申告期間の開始を来週に控え、配信者の経費について少し解説します。
過少申告(脱税)をしてしまわないように、配信者の方は必見です!
配信者の経費に関する税務署の実際の対応
配信者の方々の中には、経理や税の知識や確定申告経験が無いということで、
昨年のうちから税務署に問い合わせをしている方もいらっしゃいます。
そのような税務署に色々と質問に行っている配信者の方々から、
同じような問い合わせをいただいたので紹介します。
配信者Aです。〇〇税務署に行って経費について質問してきました。
予想より課税所得が高くて、というよりも経費がほとんど認めらませんでした。
「売り上げに直接的に繋がっているわけではなく関係性が薄い」と言われて配信上で色々使ったものがほぼ全てNG。
なめてました…。
税務署に3度通って質問しています。
とある配信者さんの枠ではそれも経費になるとかちょっと耳にしていたので税務署に行って聞いて助かりました。
がっかりした人もかもしれませんが、これが現実です。
今のご時世、きちんとした会社や店舗経営でも経費ってなかなか落とせません。
過去には、経費の認定基準も緩々で多少の丼勘定でも上手く処理すれば、
経費として認められていた時代があったのも事実です。
ただ、残念ながら今は時代も変わりました。
雑所得、しかも「配信者」なる謎の人間に対して、税務署があれやこれやと経費を認めることは残念ながらありません。
経費とは?
経費とは「事業を行うために使った費用」です。
ただし、そのお金を稼ぐにあたって必要性があり、
明確かつ直接関連するものに対して使ったものだけです。
経営者経験のある方や事業所得を得ているフリーランスの人などは、
当然ながら経理知識や肌感覚を持っています。
経費の水増しをして修正申告や税務調査になれば多くの手間がかかり、
手間も時間もお金も自分が損をするだけということも分かっています。
なので、無茶な会計処理をすることはありません。
一方、「配信で偶然稼げてしまった人」は会計や税の知識に疎い場合も多く、
ついつい無茶な経費処理に走ってしまいがちです。
では、一体どんなものが経費と認められるのか?
上の3人の方が税務署で聞いてきたことがすべてであり、
ほとんど認められないということです。
一旦受け付けてはもらえても、後に修正を求められます
上の3人の税務署の意見のポイント
通信費の30%
スマホやパソコンなどの配信機材や回線が配信専用のものでなければ、
機材費や通信費はもちろんすべて経費にはなりません。
プライベートと共用している場合は、プライベート使用分と配信使用分に分けて、
按分する必要があります。
按分するラインは多くても30~50%くらいが妥当なところで、
それを越えると具体的な根拠のある説明(なぜその割合にしたのか)が必要です。
家賃や配信上で買ったものは経費にできない
例えば、配信専用に家を借りていてそこでは一切私的な生活は行わないのであれば、
そこは事業部屋なので100%経費として計上できます。
また、家に3つの部屋があって1部屋を配信専用に使っているなら、
家賃の3分の1を経費として計上できます。
でも、そんな方って少ないですよね?
きっと「カメラを据えて自分の家の一部のスペースから配信してます」
というような人がほとんどだと思います。
そんな場合は、私用の空間のごく一部のスペースを使っているに過ぎず、
少しの場所を配信で使ったからといって経費にはできません。
また、配信上で購入した物も同様です。
配信上で購入した物や使ったもののすべてが経費にはなりません。
それができるのであれば、世の中の会社経営者や個人事業者は、
配信しながら配信者として車や住宅を購入します(笑)。
会社員の人だって「仕事中にカメラ回して何でも好きな物買っておいで。
経費で落ちるんだから」と会社から指示されているはずですよね。
「配信上で~したから全部経費」という考え方は笑い物になるだけなのでやめておきましょう。
直接的な繋がりが無く、関係性が薄いものはダメ
少し専門的な話になりますが、実に重要なポイントを解説します。
必要経費の判断基準は、次の三要素によって総合的に判断されます。
- 利益を得るための行為に直接関連するものであること
- 利益を得るために、遂行上、必要性があること
- 利益を得るための行為についての金額を明確に区別できること
特に1番目の「直接関連するものであるか否か」が重要で、
具体的にどんな業務や売り上げに結び付くのかを明確に特定できるかどうか?です。
例えば、会社の経理課の人は「ボールペン」が無いと、
経理の仕事において手書きの領収証が切れません。
だから「ボールペン代」が会社の経費として認められるわけですね。
「どんな業務においてなぜ必要なのか」が明確に特定でき、利益を得るための行為を成す為に必要である物であることも明らかです
では、配信者の場合を考えてみましょう。
物理的に機材と回線は必要ですが、それ以外はどうでしょうか?
最も多い雑談タイプの一般的なスタイルの配信者の場合、配信に直接関連する遂行上必要性な出費なんてほとんど無いことが分かります。
個人事業者の食事は経費にならない
個人事業者の食事は基本的に経費にはなりません。
個人事業主の個人的な食事は、例え「利益を得る為の行為の最中」であっても、
分かりやすく言えば「配信中であっても」経費になりません。
個人事業者の食事は家事費(生活費)として扱われますが、
家事費は経費にはならないことが法律で決まっています。
所得税法 第四五条
居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
食事は事業者に限らず、おじいちゃんだって、小学生だって、
ニートさんだって、主婦の方だってしますよね?
食事とは、人間として生きていくうえで必要な行為です。
利益を得る為の行為に対して使ったものが経費の大原則なので、
生きていくうえで必要な行為は当然経費にはなりません。
ただし、取引先との打ち合わせ等を伴う食事等であれば経費に計上できますが、納得に値する証明が必要です。
配信者の経費の裁決は既に出ています
配信者の間でも「これは経費になるorならない」論争が行われていますが、
実は遥か昔に動画配信者に対しての経費は答えが出ています。
ライブチャットという形ではあるものの、動画配信者という点では同じです。
とあるライブチャットの女性が「なんでもかんでも経費策」に出て所得を徹底的に減らし、
税務署と争った事例がありました。
最終的には国税不服審判所で争われ、国の正式な回答としての判断基準は出ています。
結論を先に言うと、経費としてはほぼ認められていません。これが動画配信者の経費の現実です。